Ⅰ 当事務所の企業再建・再生・私的整理

当事務所の企業再建・再生は、法的手続だけではありません。
弁護士の企業再生といえば、法的手続の民事再生や会社更生法がよく知られています。しかし、民事再生などの法的手続きは最終手段です。近時では裁判外のADRを中心とした再生や再建がメインとなっています。また、同時に、連帯保証となっている会社の代表者(代表取締役)について経営者保証ガイドラインに基づく交渉や特定調停を利用して、経営者自身の再起も可能となるように対応しています。
当事務所の特徴は、裁判上・裁判外ADRの手続きを使用することなく、経営分析を行い、その企業の強みを生かした再建を行うことです。

Ⅱ 企業再建のポイント

できるだけ早く専門家に相談することが何よりもです。時期が早ければ早いほど選択肢が多くなることから再建が成功する確率も高くなります。特に、コロナ禍での経営不振については、各種助成金の利用に加えて、地主との交渉、強みと弱みを把握した上での経営体制の見直しにより、経営の存続が可能となる場合も多くあります。

Ⅲ 企業の再建の例

  1. 老舗ホテル
    老舗ホテルの建物賃料が経営を圧迫し、恒常的な営業赤字が継続している状態で相談に来られました。賃貸借契約に法的な不備があったことから、この点に着目した上でオーナー側と交渉を行い、当面の賃料減額とその後売り上げに応じた出来高賃料方式に変更したことで、ホテル事業の存続が可能となり再建することができました。
  2. 婦人服の販売
    赤字の原因が在庫の売れ残りであったこと、メーカーと長年の信頼関係があったことから、メーカーに買い取り方式から委託販売方式に変更してもらいました。これにより、店舗が在庫を抱えることなく経営ができるようになり、再建を果たせました。
  3. プラスチックメーカー
    ホームセンターに納品するプラスチック製品を製造する企業でしたが、価格が低いということで慢性的な赤字となってしまっていました。ホームセンターの協力を得て、仕損率を改善するフローを作成しました。また、製品ごとの製造ラインを効率よく配置して、無駄な作業と時間の短縮を図ることで、労働効率を高めリストラを回避しました。更には、見込み生産を行っていたことが売れ残りを招いていましたので、ホームセンターの協力の下、受注生産が可能な連携を構築しまして利益がでるようにしました。
  4. レストラン
    レストラン経営で、営業利益の赤字が続き、特に人件費がネックとなっていました。メニューが非常に多く、仕入れコストや廃棄処分が多く発生していたことから、メニューの削減を行いました。また、強みの料理をベースとした限定セットをランチ・ディナーに導入し、セットだけで採算がとれるようにしました。

Ⅳ 事業承継

適切な事業承継なども私たちの得意とするところです。民事信託を利用した事業承継はもちろん、次のようなM&Aなどの手法を取り入れることで、店舗や設備、スタッフ等の経営資源を無駄にすることなく事業承継することに成功しています

  1. 調剤薬局
    高齢で持病が重くなったため営業日を半分にした上で、閉鎖を考えているものの土地・建物を売却しても銀行借り入れが残ってしまうということで相談に来られました。売り上げ自体はある薬局でしたので、臨時で薬剤師を雇い、全日営業を確保した上で、M&Aにより多数の店舗を展開する薬局(会社)に売却しました。
    M&Aにより、不動産の価格に加えて、将来の収益が売却価格に加わったことで、銀行へ返済しても数千万の余剰が出ました。これと同じくらい喜んでもらえたのは、店舗が田舎にあったこともあり、買主も、経営者である薬剤師に最初の1年は週の半分、2年目は1-2日で雇用し、顧客等の引継ぎを奇病したことから、持病が悪化したものの少しは働きたかった経営者にとっては、願ったり叶ったりの条件となり、win-winの解決ができました。
  2. ガソリンスタンド
    将来性がないということでガソリンスタンド経営を辞め、別の事業展開を考えていましたが、地中のガソリンタンクやガソリンが地中に含まれることもあり、宅地として売却しても借入金の返済には及ばず、3人の弁護士に相談したものの全員が破産しかないということで当事務所に来られました。
    不動産仲介業者の協力を得て、ガソリンスタンドの経営を考えている方にガソリンスタンドの土地・建物・設備を売却することにより、本来の不動産価格で売却できた上、将来見込まれる数年分の収益も売却代金に上乗せすることができましたので、借入金の返済はもちろん、新たな道での再出発のための事業資金及び自宅(中古住戸)も確保することができました。
  3. 居酒屋
    客は多く粗利は十分であったものの、店舗開設時の多額の銀行借入が利益を圧迫し、リスケ等の後に万策尽きて、店舗を閉鎖して破産するしかないがスタッフの雇用はなんと確保してあげたいとして相談に来られました。借入金の関係で破産は不可避でしたが、裁判所に納める予納金も手元にない状況でした。
    居酒屋の店舗をそのまま従業員に引き継ぐことに成功し、ビルのオーナーとの調整をした結果、従業員全員の雇用を確保し、店舗を存続させることができました。また、この時の売却金により、法的手続きの費用も捻出することができました。
  4. 病院
    開院時の建設資金の借入が収益を圧迫し、また、ベット稼働率が低く恒常的な赤字となっていました。
    経営分析によりベッド稼働率の向上や重点政策をとりまとめ、有能な人材確保の観点から医療従事者向けの勉強会を行うことでスタッフの理解と不満解消・士気向上を図りました。医療スタッフの要望をディスカッション形式で自ら優先度の高いものに取捨選択できる体制を構築し、自主的な再生基盤が整いました。連帯保証をしていた理事長には経営者保証のガイドラインに基づく特定調停を利用して解決し、自宅等の確保も実現しました。