判決速報:JIFFA BL(船荷証券)のシッパーズパックコンテナの免責特約を有効とした大阪高裁判決

(控訴審:大阪高裁令和3年8月26日判決【上告不受理により確定】、第一審:大阪地裁令和3年3月5日判決)

2022.05.11

我が国においてコンテナの国際複合運送や国際海上運送で貨物を輸出入する際、利用運送人(NVOCC)との間でよく使用される船荷証券(BL)に、国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)のJIFFA国際複合一貫輸送約款(2013)[略称:JIFFA MT BL(2013年)]があります。本件は、国際海上運送中のコンテナヤードでのコンテナ貨物の水濡れ事故について、荷主に貨物保険金を支払った保険会社がフォワーダー(利用運送人)に対して求償をしてきた事案で、この船荷証券(B/L)の裏面約款の、シッパーズ・パック・コンテナ(Shipper’s Pack Container)について運送人を免責する規定(本件免責規定)の有効性が国際海上物品運送法15条1項(現行法11条1項)との関係で問題となった事案です。これまで、国際海上運送中に貨物が損傷した場合にこの特約の有効性が正面から問題となった公刊の裁判例はないようです。私は運送人(FW)側で、大阪地方裁判所(第一審)・大阪高等裁判所(控訴審)いずれも完全勝訴となっておりましたが、2022年5月10日、最高裁判所は保険会社の上告受理申立について上告不受理決定をし、大阪高裁の判断が確定しましたので皆様に紹介いたします。

1.事案の概要

本件は、タイから日本へのコンテナ貨物の海上運送契約において、コンテナ内の貨物が冠水し一部の貨物が全損になったとして荷受人に貨物保険金を支払った保険会社が保険代位により、海上運送に関して船荷証券を発行していた運送会社(利用運送人)に対して求償した事案です。訴訟では、原告は、本件貨物の冠水は清水によるものであり、タイの港か日本へ輸入後の港のコンテナヤードにおけるコンテナ保管中の降雨によるものであると主張しました。これに対して、運送人(被告)は、船荷証券(BL)裏面約款の①シッパーズパックコンテナ(Shipper’s Pack Container)の免責条項による免責や、②「梱包不完全」による免責などを主張して請求の棄却を求めました。

2.大阪地方裁判所令和3年3月5日判決

第一審の大阪地方裁判所は本件免責規定の「コンテナが運送人により詰められたものでないとき」に該当し、シッパーズパックコンテナによるものとして運送人は免責されると判断し、原告の請求を全面棄却しました。梱包不完全かどうかの判断はされませんでした。

3.大阪高等裁判所令和3年8月26日判決

原告(保険会社)は第一審判決を不服として控訴しましたが、大阪高等裁判所は第一審の判断を全面的に支持し、控訴を棄却しました。

  1. 控訴人(原告)は、第一審・控訴審を通じ、本件免責規定は、貨物のコンテナへの積付け不良や貨物の性質により生じた損害,貨物の数量不足等といったコンテナに貨物を積載した荷主に帰責すべき損害について免責する規定であり,本件水漏れなどの荷主による積載であることと無関係の損害について免責する規定ではない旨主張していました。しかし、大阪高等裁判所は、第一審の「本件免責規定においては,免責対象となる損害を限定する旨の文言が存在しない。そうすると,本件免責規定は損害の発生原因について限定することなく免責する旨を定めた規定であると解するのが相当である」の判断を維持して、控訴人(原告)の主張を退けました。
  2. また、控訴人(原告)の本件免責規定は法15条1項に反して無効との主張については、次のとおり判示し、結論において第一審と同じ判断をしました。「本件について法15条1項の適用の有無について検討すると、国際海上物品の運送においては,受取,船積み,積付け,運送,保管,荷揚げ,引渡しの各段階を経るところ,へイグ・ルールは,国際海上物品運送につき,運送品の船積みから荷揚げまでの間についてのみ海上運送の特殊性を認め,その間に生じた事実により生じた損害についてのみ免責約款を禁止し,運送品の船積み前又は荷揚げ後の責任関係については各国の国内法に委ねた。ヘイグ・ルールを国内法化するために制定された国際海上物品運送法は,その適用区間を運送品の受取から引渡しまでとしたが(3条1項),国際競争の観点や各国の立法の実情に鑑み,15条3項により,運送品の船積み又は荷揚げ後に生じた事実により生じた損害については,免責約款を禁止していない。本件運送契約のようなシッパーズパックによるコンテナ輸送は,船舶への積込み前の臨界ターミナルでの受領及び保管が予定され,船舶から下した後の臨海ターミナルで、保管及び引渡しが予定されているとしても,別異に解すべき根拠はないというべきである。」
  3. この点について、控訴人(原告)は、①ハンブルクルール[The Hamburg Rules](国連海上物品運送条約)及びロッテルダムルール[the Rotterdam Rules](全部または一部が海上運送である国際物品運送契約に関する条約)では,貨物の受領から引渡しまでの間の免責約款を禁止している,②国内法において貨物の受領から引渡しまでの間の免責約款を禁止している国がある(韓国,コンテナ輸送について中国),③イギリスにおいて,コンテナへの積込みが船積作業の一部であるとした裁判例がある、などとして、③については、近時の英国の著名な判例(Volcafe Ltd v Compania Sud Americana de Vapores SA (上告審:[2019] 1 Lloyd’s Rep.21。控訴審:[2017]1 Lloy’s Rep.320、一審:[2015]1 Lloyd’s Rep.639。海事法研究会誌2020年8月号ご参照)を引用し、船積み前のコンテナ詰め作業もヘーグ・ルール(the Hague Rules)の適用があるとされていることから、本件のコンテナヤードにおける事故は、運送人がCYで貨物を受領している以上、「船積前」には当たらず国際海上物品運送法15条1項の免責特約の禁止に該当するなどとして争っていました。
    なお、この英国判例(Volcafe Ltd v Compania Sud Americana de Vapores SA ([2019] 1 Lloyd’s Rep. 21))は、コンテナで運ばれたコーヒー豆がステベによる積付不良が原因で結露による損害を被った事案であり、運送人の「コンテナに詰める作業は船積前だからその責任にへーグルールの適用はない」との主張を排斥し、「コンテナ詰めと船積作業が時間的に離れていても、一体の作業であるから、コンテナ詰め作業もへーグルール上の『船積み』に該当する」として、へーグ・ルール(the Hague Rules)を適用した判例です。

    大阪高等裁判所は「本邦が批准していない条約,未発行の条約,本邦以外の国の国内法及び裁判例,被告以外の船会社の船荷証券,貿易取引の条件における定めや判断であり,これらの存在から直ちに法15条1項の「船積」及び「荷揚」の内容の解釈が定まるとはいえない。」と判示して控訴人(原告)の主張を排斥しました。
  4. また、控訴人(原告)の本件免責規定は公序良俗に反するとの主張についても、運送人(被控訴人)が,本件免責規定の適用を受けることで,荷受人の「自由な意思決定を過度に制約した上での著しい不利益において過大な利益を得たということはできない」として,本件免責特約は公序良俗に反しないと判断しました。
  5. 更に、BL裏面約款が小さな文字で書かれているために無効との主張については、第一審裁判所は、理由については特段踏み込むことなく、「本件免責規定が本件船荷証券に明記されていると認められる」として有効と判断していましたが、控訴審でもこの判断が維持され、控訴人の主張は退けられました。なお、JIFFAの船荷証券は2013年に改定されており、そこで初めて船荷証券の表面に「要求があり次第、裏面約款の拡大版を入手できる」という表示がなされていました。

4. 掲載誌等

業界最大手の日本海事新聞に2022/6/14の1面Top記事として大きく取り上げられました(私が投稿等したものではありません)。コンテナ貨物水損「BL約款の免責は有効最高裁でFW勝訴 シッパーズパック争点 として船会社・船主•フォワーダー(FW)の皆さま向けに事案と大阪高裁判決のポイントが分かりやすく紹介されており、web版でもご覧頂けます。

(文責:弁護士・海事補佐人・海事代理士吉田伸哉)

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